チョコより甘い恋を。
深月&道明
ブラウニーは、綺麗にラッピングされて紙袋に入れられている。

それに、普段何かとお世話になっている道明(みちあき)のご両親の分も、ブラウニーが入っている。

せっかくのバレンタインだ、ミッチーに渡したいけれど、渡すタイミングを失ってしまった。

ミッチーは、私が勝手に付けた道明のあだ名だ。

彼は車の免許取得と、アルバイトに忙しく、なかなかデートの時間も作れないでいる。

私がいなくてもリア充してるじゃん、ミッチーってば。

悩んでいても仕方ないと、道明の家まで来てみたものの、両親もいないだろう。

渡したい相手がいないのに、いつまでもここにいる理由はない。

……帰るか。

踵を返そうとした、その時だった。

「深月ちゃん?
どうしたの?

秋山家の前でボーッと立ち尽くして。

ウチの両親もいるから、中入ろう?

今日来るって、連絡しておいたんだ。

ここにいると寒いよ」

営業向けのハツラツとした声が背中に届いた。
< 6 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop