両手から溢れる愛を

***


「ありえない!!!!」

開口一番。

おはようと声をかけられる前に放った言葉。


「お、おぉ。おはよ」
「おはよう!」

驚いたみっちゃんがそれでもいつもと同じくくれた挨拶に、怒り収まらぬ勢いで返事をする。


「どしたの、凪。ご立腹じゃん」
「聞いてよみっちゃん!」


みっちゃんこと美智子は私の親友で、ただならぬ態度の私に面白いものが見れるかもとニヤニヤしながら前の席に鞄を置く。

そのまま椅子をくるりと回転させて、私の机を挟んで向かい合って座る形になった。


「──友達にしか見れない」
「へ?」
「……って言ったの!」
「誰が……ってあぁ! もしかして昨日のドラマ?」

察しのいい私の親友はすぐに何のことかわかったらしい。

「そう!」

今期話題の恋愛ドラマ。
高校を舞台に2人のイケメンが女の子を取り合うという、まさに世の中の女子が憧れるようなシチュエーション。という触れ込みだったはずなのに。


「なんっっっなの! なんっなのまじで!」

目を瞑れば昨日の光景がありありと思い出されて、また沸々と感情が湧き上がる。

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