先生、それは✗✗です…!
「と…鳥羽さん、わたし…帰ります!」

「え、もう?」


話は聞いたけど、鳥羽さんの話がすべて事実という確証はどこにもない。

よくわからない以上、ここにいるのは危険だ。


「ご迷惑おかけしたのなら…謝ります。すみませんでした…!」


わたしは着ていたバスローブを軽く畳みソファの上へ置くと、バッグを持って玄関で慌ててパンプスをはいた。


「待てよ。なにをそんなに怒ってんだよ?女子大生なら、キスの一度や二度くらいしたことあるだろ?」


わたしの顔をのぞき込む鳥羽さん。


わたしは女子大生じゃないし、キスの一度や二度だってしたことがなかったのにっ…。


鳥羽さんから顔をそらすように、わたしは頬を赤くしながらうつむく。


「じゃあさ」


そんな声が聞こえてふと顔を上げると、意地悪く微笑む鳥羽さんがわたしを見下ろしていた。
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