先生、それは✗✗です…!
鳥羽さんが、わたしが背にするドアに手をついて迫ってくるものだから、わたしは逃場を失う。


「俺たち、付き合う?」


突拍子もないその言葉に、わたしは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまった。


「…な、なんの冗談――」

「冗談なんかじゃねぇよ。初めて見たときから、かわいいなって思ってた」

「わたしの名前も覚えてないのに…?」

「うん、それはごめん。俺、人の名前覚えるの苦手だから。今度は忘れないから教えて」


鳥羽さんが耳元でささやくものだから、くすぐったい。

だけど、同時にじんわりと耳が熱くなる。


こういうのが、――“大人の恋愛”っていうの?

だって“付き合う”って、お互いが好きでその気持ちを確かめ合って、初めてそこで『付き合おう』ってなるんじゃないの?


…こんなの、わたしの理想の恋愛とはまったく違う……!
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