平凡な偽聖女ですが王太子様と結婚することになりました!
最近では助けを求める人が屋敷まで来る始末です。
「聖女さま、奇跡を! 娘が病気なのです!」
幼子を連れた母親を見ると心が痛みました。ですが、私には何もできません。
「聖女さま、うちのおばあちゃんが腰痛で困ってて……」
ですから、私には何もできないのです。
「聖女さま、奇跡を! 息子が引きこもって家から出てこないのです!」
だから、私には何もできないっつってんだろ! 知るか!
……失礼いたしました。つい、前世の口調が出てしまいました。
最初は「変な噂」と笑っていた家族も、最近は深刻な顔で「どうしよう」と悩んでいます。
憂鬱になっていると、不思議なことが起きました。
「聖女さま、ありがとうございました! いただいた薬が効いて娘の病気が治りました!」
「聖女さま、ありがとうございます! お渡しくださった湿布がよく効いておばあちゃんの腰が良くなりました!」
「聖女さま、ありがとうございました、息子が恋をしたとかで、部屋を出て働くようになりました!」
私は何もしていないのにお礼を言われるのです。家族に確認しても誰も何もしていないと言います。
ますます不気味です。聖女の噂は加速してしまいました。
「本当のことを教えて。あなたが聖女なのではないの?」
家族にまで疑われました。
「違います」
母に聞かれ、父に聞かれ、兄弟にも聞かれ、そのたびに否定しました。
あんまり聞かれるので
「だから違うって言ってんだろ!」
と怒鳴ったら
「はしたない!」
と母に怒られました。
だったら何度も言わないで頂きたいのです。