平凡な偽聖女ですが王太子様と結婚することになりました!
「知ってるよ」
「はっ!?」
 はしたなくも声が出てしまいました。

「知って……ご存知、とは……?」
「聖女の噂、僕がまいたから」
 にこやかに殿下が言いました。私は目が点になりました。

「一目見たときから君と結婚しようと思っていた。覚えてないようだけど、だいぶ前に君と会ってるんだよ。だけど君は男爵、地位が低いから普通は結婚できない。だからちょっと細工したんだ」

「細工って……」
 どういうことでしょう。心臓がバクバクして、頭がクラクラします。

「過去、聖女は出生の身分とは関係なく王族と結婚している前例がある」
 唖然としてしまって、言葉が出ません。

「だから魔法で君を聖女に見せかけた。君が歩いたあとに花を咲かせたり、香水を撒いたり、歌っていると鳥が飛んで行くようにしたり」

 そんな小細工を!? っていうか、それもうストーカーじゃん!

「治療を希望する人には聖女からと言って薬や湿布薬を渡した。引きこもりのときは大変だったなあ。女優を雇ってあれこれしたんだ」

 王子って意外に暇なの? って、そうじゃなくて!

「ダンスをしたときもね、魔法で光を漂わせて効果的にしておいた。みんなびっくりしてたね」

 クスクスと殿下が笑います。
 私はただただ呆然としました。
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