君の嘘から始まる本当の恋
「え?ああ…うん」



私の下ろしている背中の中心らへんまである髪の毛をさらりとすくってきた天峰くんに、曖昧に頷いておく。


本当は慌てて出てきたから髪の毛をポニーテールにしている時間がなかっただけだけど。



「…はっ、そうだ!慌てすぎてすっぴんじゃん!」


「は?」



天峰くんに背を向けて、慌てて手鏡を取り出して覗き込む。


あまり派手なメイクはしないにしろ、眉毛を描いたりまつげをあげたりといつもは少しだけメイクをしているのに、今日は何もしないまま飛び出してきてしまった。


顔は洗ったけど、寝癖もそのままだし、こんないつもよりも不細工な顔でキラキラの天峰くんの隣なんて歩けないよ!



「あ、あの天峰くん。私ちょっと先に学校へ…」



顔を両手で隠したまま走り去ろうとすると、天峰くんに腕をがっしりと掴まれてしまった。
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