君の嘘から始まる本当の恋
再び振動するスマホを無視しながら、誰もいない静かな廊下を歩いていく。



「…よう…お…」



教室の前まで着いたところで、中から誰かの声がして扉を開けようとしていた手を引っ込める。


てっきり俺が一番乗りだと思っていたけど…一体誰だ?


そっと覗いてみると、後ろの席で女子生徒が手鏡を片手に何かを喋っていた。



「おはよう。おはよー。おは!うーん…難しいな…」



どうやら挨拶の練習をしているその女子生徒は、笑顔を作りながら何度も何度も繰り返していた。


これ…入らない方がいいよな?



踵を返して去ろうとすると、鞄ががんっと扉に当たってしまい女子生徒が弾かれたようにこちらを振り返った。


…やってしまった。
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