ウソトホント
私は読んでいた本にすぐに視線を戻し、並べられた私とは無縁の単語たちに人知れず肩を落とした。
やっぱり、今日想いを伝えるのはやめようか。
そんなことが頭をよぎった。
そもそもエイプリルフールに告白するなんて、ずるいことは自分でも分かっている。
うまくいかなくてもエイプリルフールって言ってしまえば無かったことにできる。
そんな打算的な考えが、私にはあった。
「泉」
「はいっ」
グルグルそんなことを考えていたら名前を呼ばれて反射で返事をする。
顔を上げると柏木くんが立っていて、「資料室行くんだろ、日直」と言った。
次の授業で使う資料を運んでおくように頼まれていたんだった。
「あぁ…、そうだね」
私は、先に教室を出た柏木くんのあとを小走りで追いかけた。