ウソトホント



狭い資料室には大きな世界地図や、スクリーンなどが無造作に積まれていた。



「地図ってこれか」


柏木くんが言った。


教室のような喧騒は無く、シーンとした資料室に柏木くんの声が響く。


「うん」



短く返事をした私に、柏木くんは少しの沈黙のあと「なんで今日いつもと違うの?」と言った。


いい匂いがすることと、メイクで雰囲気がちがうことを言っているのだろう。




「エイプリルフールだからだよ」


「なんだそれ。意味わかんね」


私は、今しかないとおもった。



「柏木くん、さっき好きなタイプ言ってたよね」


私は真っ直ぐ柏木くんを見た。


「…あー、うん」


柏木くんはそんな私から視線を外す。



「私は…、


教科書わすれたときは黙って見せてくれて、

数学で先生に当てられて答えられないときに代わりに答えてくれて、

自習のときはくだらない話をして笑わせてくれて、

口が悪いけど頼りになって、

意地悪だけど優しくて、

サッカーがんばってて、

そういう人がタイプ」


一気に喋ると、柏木くんの暫くの沈黙がすごく長く感じた。


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