神祇地祇~穢れ、祓います!~
最終章 娘と短刀
長い夜が明け、激闘のあとをしんしんと降り積もる雪が隠していく。
「伶龍……」
刀からはもう、彼の声は聞こえない。
もう、彼はこの世にいないのだ。
「嘘だと言ってよ……」
折れてしまった刀を抱き、仮設司令所で丸くなる。
祖母は穢れの足に大きく身体を抉られ、危篤状態だ。
曾祖母は無事だが全身打撲で動けない。
「……翠さん、手を」
救護員の女性から声をかけられた。
返事をせずにいたら彼女は私の前に座り、両手を取った。
「痛くないですか」
てきぱきと血だらけの私の両手を消毒し、彼女は包帯を巻いていく。
「ここは我々に任せて、あなたも病院へ行ってください」
彼女の後ろに立っている、柴倉さんの声が頭の上から降ってくる。
「でも、伶龍、が」
きっとすぐに、「なに泣いてんだよ」って笑いながら戻ってきてくれるはず。
そう信じて、ここから一歩も動けずにいた。
「伶龍はもう、いないんです。
あなたが抱いているそれが証明しているでしょう?」
柴倉さんから指摘され、びくりと刀を握る手が反応する。
「でも。
……でも!」
勢いよく顔を上げると、柴倉さんと目があった。
「伶龍……」
刀からはもう、彼の声は聞こえない。
もう、彼はこの世にいないのだ。
「嘘だと言ってよ……」
折れてしまった刀を抱き、仮設司令所で丸くなる。
祖母は穢れの足に大きく身体を抉られ、危篤状態だ。
曾祖母は無事だが全身打撲で動けない。
「……翠さん、手を」
救護員の女性から声をかけられた。
返事をせずにいたら彼女は私の前に座り、両手を取った。
「痛くないですか」
てきぱきと血だらけの私の両手を消毒し、彼女は包帯を巻いていく。
「ここは我々に任せて、あなたも病院へ行ってください」
彼女の後ろに立っている、柴倉さんの声が頭の上から降ってくる。
「でも、伶龍、が」
きっとすぐに、「なに泣いてんだよ」って笑いながら戻ってきてくれるはず。
そう信じて、ここから一歩も動けずにいた。
「伶龍はもう、いないんです。
あなたが抱いているそれが証明しているでしょう?」
柴倉さんから指摘され、びくりと刀を握る手が反応する。
「でも。
……でも!」
勢いよく顔を上げると、柴倉さんと目があった。