陽気なドクターは執着を拗らせている。


「ブロックと私がいなくなったことが証拠ではないでしょうか。それを今更あーだこーだ言われても……」

「うん、そうだね。だけどさ、こうして再会できたんだし。やり直そうよ」


 綿谷先生は私の手の甲をそっと握り、私にトロンとした顔を向けた。

  
「……無理です。矢田は私のことを『後腐れなく縁切りさせてきた』って言っていましたけど、実際部長とまだ別れてないですし、私は今の会社にこれからも勤めなければいけません。私は矢田みたいに部署異動なんてないので、部長とも上手く付き合わなきゃいけないですし」


 部長との今後を説明していると、綿谷先生は「それなら大丈夫だよー」とお気楽に笑った。


「会社辞めれば? 俺と住もうよ、宇野女ちゃん」

「…………はあ?」


 あまりの突拍子もない言葉に、怒りと呆れが入り交じる。


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