陽気なドクターは執着を拗らせている。


「宇野女ちゃん現実見てよ。俺の方が若いし、金もそこそこあるし、独身だし、自分で言うのもアレだけど顔は良い方だと思うし、料理もするし、体力あるし、夜の相性もバッチリでしょ? 宇野女ちゃん今いくつだっけ?」

「二十八ですが……」

「俺、三十四。歳も俺の方が近いでしょ」


 武平部長は今五十五歳。


 部長とは夜の方の相性は、正直良いとは思っていない。それより好きが勝るから半年間つき合ってこれた。部長の「絶対嫁と別れる」この言葉を信じてこれた。


 ……けれど、今はそうじゃない。


 部長に対して信じて待つことができない今、私の未来はない。


 絶望しながら綿谷先生に質問をする。


「もし仮に仕事を辞めたら、私はどうしたらいいんですか」

「ん? 別に働かなくていいよ。でも宇野女ちゃんが働きたければ、アルバイトでもパートでも、どこかの正社員でもいいし」

「今の会社、お給料良いんです。大学を卒業して、倍率高い中、奇跡的に就職できたんです」


 綿谷先生が頑張って医者になったように、私も頑張って就職をした。


 それを分かってほしかった。

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