陽気なドクターは執着を拗らせている。


 『宇野女が不倫された側だったらどうするか考えてみてよ』と言われ、少しの間考える。


 部長と嫁さんが別れて、もし部長と結婚できたらということを想像する。部長は私と愛し合って結婚してくれたはずだ。それなのに、不倫を影でしていたら……私も、許せない。


 他の女を抱いた体で抱いてほしくないと思う。


 あれほど『部長が好き』で、埋め尽くされていた脳が、綿谷先生の一言により、冷静になっていく。そして、

「許せません……」

 一言そう呟くと、綿谷先生はニッと微笑んだ。


「宇野女ちゃん、部長は宇野女ちゃんに奥さんの悪口言っているのかもしれないけど、全然そんなことはなくて凄く素敵な人なんだよ。凄く人を思いやれる人。だから、そんな人が宇野女ちゃんを憎んで恨んでほしくないんだよ。俺が言ってること、わかるかな?」


「…………はい」


「うん、じゃあ、どうするか分かる?」


 綿谷先生に誘導されるかのように、私は部長に「もうプライベートで会えません、終わりにさせて下さい」と送る。


 部長との関係が終わった。


 私が終わらせた。


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