陽気なドクターは執着を拗らせている。
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「――ということがありました」
何もする気が起きない一週間ほど、暇なものはない。
綿谷先生は元カレ以上に会いたくなかった人だったにも関わらず、暇すぎて今日という日を数日前から待ちわびていた。
一週間前と同じバーで、ウイスキーサワーを片手に愚痴る私への綿谷先生の視線は、手元のウイスキーサワーに向けられていた。
「いや、一発目にウイスキーサワーて」
「え? なにか問題でも!?」
「それ、酒を堪能した後に飲んだりするでしょ、普通は」
「不倫するようなヤツに普通な人はいないでしょ」
今、私は破滅的にかわいくない自信がある。
綿谷先生の言葉に嫌味を含めながら答えてしまった。
これだけはしないようにと、部長にはとても気を遣っていたのに、気を遣ってもあっさり捨てられる事を知った私は、そんな事を考える余裕もないほどに自暴自棄になっていた。