陽気なドクターは執着を拗らせている。


「にしても、良かったね、宇野女ちゃん。部長から離れられて、矢田くんと同じ部署なれて」


「これも綿谷先生のおかげです。あの、私……部長の奥さんに謝りたいです。ちゃんと自分が仕出かしたことを償いたいです」


 この一週間、何もする気になれなかったけれど、部長の奥さんのことはずっと頭の片隅にあった。自分が仕出かしたことの重さが、部長と離れてみて、綿谷先生と話してみて分かった。


 許してもらいたいなんて思わない。


 けれど、許される努力はしたい。



 綿谷先生は烏龍茶を一口飲んで、「宇野女ちゃんはもう部長から身を引いたんだから、それでいい」と、私を諭した。


「部長の奥さん、体が弱いって言ったよね。話して体調が悪化したらどうすんの? 償いとしてずっと奥さんの面倒見ていけるの? 宇野女ちゃん責任取れないでしょ。自己満でそういう軽はずみな発言は控えてくれるかな」


 綿谷先生の顔は強張っていた。

 部長の奥さんのかかりつけ医だから当然だ。


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