陽気なドクターは執着を拗らせている。


「……今を、大切に……」

「うん。医者の仕事をしてるとね、今を大切に生きれない人を目にする機会が多くてね。もちろん、今を大切に生きてほしくて俺らは患者様に最善の治療法や薬を提供してるんだけど、でも、未来を諦める人も中にはいるから。尚更、俺が愛している人の笑顔は、生涯を通して近くで見ていたいって思うんだよね」


 綿谷先生の真っ直ぐな言葉に、私の心がどれほど醜く汚れているのかを思い知らされる。


 『好き』だの『嫌い』だの『疲れた』だのを理由に、綿谷先生の好意を蔑ろにしてしまっていた自分がひどく情けなく感じた。


 綿谷先生につり合う人になりたい。

 好きだと思って良かった、と、思われる人になりたい。そのために私は綿谷先生と生涯を共にする。


 愛が憎しみに変わることがないのなら、理由なんて、それだけでいい。


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