陽気なドクターは執着を拗らせている。
***


 『結婚前提に交際するんだから、俺の家に来なよ、宇野女ちゃん』


 アパートの契約更新が迫っていた中、綿谷先生のこの言葉で、私は綿谷先生の家に引っ越すことになった。有給休暇の間に荷物をまとめて、住み慣れたこのアパートから出ていく準備をする。


 一回来たことがある綿谷先生のマンションは、とても綺麗で部屋数も三個ほどあるらしい。その一室を貸していただけることになった。


 必要最低限の物だけアパートに残し、後は綿谷先生の家に引越し業者を使って荷物を運ぶ。引っ越しも無事に終え、


「よろしくね、宇野女ちゃん」


 ――私は今日から綿谷先生と一緒に生活することになった。


「ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします」


 ごちごちに固い表情で綿谷先生に挨拶をすると、「他人すぎ!」と、笑われてしまった。


「ここが宇野女ちゃんの部屋なんだけど、大丈夫かな?」


 与えられた部屋には既にベッドやソファーや棚やテーブルが置かれていた。


「大きいもの、処分してきてしまったのでありがたいです」

「でも、寝る時は俺と一緒で、ね。宇野女ちゃんが来てくれるから寝室のベッド、大きいやつにしたんだから」


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