陽気なドクターは執着を拗らせている。
それからというものの、綿谷先生との結婚前提の同居生活が始まった。
基本的に忙しい綿谷先生だけれど、一緒にいれる日は二人の時間を大切にしてくれる。会話がある時もあれば、なくても全然平気で居心地は悪くはなかった。
「杏月ちゃん」「優吾さん」お互いにたまに名を呼ぶこともあるけれど、基本的には「宇野女ちゃん」「綿谷先生」と呼んでいた。
一緒に生活をし初めてちょうど1ヶ月が過ぎた頃、夜の8時に綿谷先生が「ただいまー」と、帰宅をした。綿谷先生の鞄を受け取る私は、形だけ綿谷先生の奥さんのようだった。
ため息を吐きながら靴を脱ぐ綿谷先生。なんだかいつもより元気がない。
「綿谷先生、大丈夫ですか? 今日はハンバーグにしてみましたが、食べれそうですか?」
「いつもありがとう。明日は休みだから俺が作るね」
そう言いながら、「いやあーまいったなー」と、また息をついた。
私には言えない何かがあったのかもしれない。