陽気なドクターは執着を拗らせている。


 答えになっていない返事が返ってきた。優しくありたい、の、理由が知りたかったのに、綿谷先生はやっぱり私の手が届かないところにいる。



 「冷めないうちに食べようか」と、テーブルに着き手を合わせてハンバーグを口に運ぶ綿谷先生。


「凄く美味しい。宇野女ちゃんは本当料理上手だね」

「こねて焼いただけですよ」

「でも手前かかるじゃん。俺、思うんだけどさ。優しい人じゃなきゃ人様に料理を作ろうってならないと思うんだよね。だから、宇野女ちゃんは十分優しいんだよ」


 「だからそんなに悲観的にならないで」と、慰めながらハンバーグをペロリと平らげてしまった。


 今まで綿谷先生のこの空間は安らげる場所だったはずだ。


 私が来てから安らげる場所じゃなくなったと思われたくない。


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