陽気なドクターは執着を拗らせている。
4.執着を拗らせている


 ***


 武平部長はいつも会社に来るのが早い。
 朝、会社に出社して誰もいないオフィス内でコーヒーを飲むのが好きだと言っていた。


「宇野女ちゃん起きて! そんなんじゃ会社に出社した時、遅刻ばっかりでノロマって言われるよ!」


 陽射しが気持ちよくて、優しい温もりに包まれていた私を容赦なく叩き起こす綿谷先生。


「ううっ、あと五分だけ……」

「言い訳を考える天才って、すぐにできない言い訳を考えるんだよ。その時間、何、って思わない?」


 今日も優しい笑顔で私の心に矢を刺してくる綿谷先生。返す言葉が出なくて、のそのそと起き上がる。


 無事に綿谷先生と一緒にマンションを出て、電車へ乗り込む。私が務めている会社へ着き、綿谷先生に建物内の外にいてもらうように伝えた。



< 35 / 48 >

この作品をシェア

pagetop