陽気なドクターは執着を拗らせている。
2.会いたくなかった男
――幸い、部長は今日は午後から休暇を取っていた。ただ、私のLINEには【良い上司でいなきゃいけないからあんなことを言った】と書かれていたが、部長には悪いが既読無視をする。
返せる気力がない。
仕事を定時で終わらせた私と矢田。
行きつけのバーで飲むらしく、「もう来てるって。宇野女、急げ!」と急かされる。
こうして矢田の行きつけのバーに着いた私は、落ち着いた雰囲気の空間に足を踏み入れる。
「あっ、いたいた! 綿谷さーん!」
矢田は「綿谷」と名前を呼びながら、バーのカウンターで一人飲んでいる男性に手を振った。
男性は私達に体を向け手を振り返した。
綿谷優吾。
34歳、ドクター(内科医)。
元カレ以上に会いたくなかった男が今、目の前にいる。