陽気なドクターは執着を拗らせている。
のんきな矢田は、私の視線に気づかずに、
「綿谷さんが探していたウチの会社の宇野女ってこの子でしょ? 後腐れなく縁切りさせて連れてきましたー」
と、綿谷先生に報告している。
矢田が部長と引き離したのは、私のためではなく綿谷先生のためだったみたいだ。
……バカ矢田。本当に余計なことをしてくれた。
綿谷先生は矢田に「ありがとねー」とお礼を言うなり、「宇野女ちゃん、飲もうー」と私にこっちに来いと、手招きをした。
「じゃあ、僕は帰りますねー。ごゆっくり!」
そう言って離れようとする矢田の腕を掴む。
「あの人、1年前に私をめちゃくちゃに犯したの。会いたくなくて避けてたのに、なんてことしてくれたの」
私の気持を分かってほしくて、綿谷先生がどれほどヤバイ人が説明をするけれど、矢田は、
「でも、部長と不倫して慰謝料支払って地方に飛ばされてお先真っ暗で孤独死するよりマシだって」
自分の持論を押し通す。
……そうだ。矢田は頑固で、言い出したら聞かなかったんだ。