恋愛下手の恋模様~あなたに、君に、恋する気持ちは止められない~
「みなみちゃんはさ、匠のこと、本当に好きなの?」

築山さんが真剣な目で私に問う。

そう訊ねるのは、この人にとっても補佐が大事な人だからだと思った。私は築山さんを真っすぐに見返して答える。

「――好きです、とても。ずっと隣にいたい。だからそのためにも、私は補佐の昔のことを知って、それを自分の中で消化できたらいいなって思ったんです。そうすることで、まだあの人の心に残っているかもしれない傷みたいなものもひっくるめて、少しでも癒してあげられたらいいな、って……。おこがましいですけど」

今の答えで合格点をもらえるだろうかと不安に思いながら、そっと目を上げる。にやにや笑いが入り混じったような顔の築山さんと目が合った。

「意地悪なこと言ってごめんね。わざわざ聞かなくても、この前の様子で分かっていたんだけどさ」

微笑ましいものでも見るような築山さんの視線を浴びて、頬が火照った。冷たいものが欲しくなって、私はグラスに口をつけた。ひんやりした感触が喉を通って気持ちがいい。

私の様子が落ち着くのを待って、築山さんは口を開いた。

「で、聞きたいのは、やっぱり」

「補佐が離婚された理由を」

私は手元に視線を落として続けた。

「あの日ここに来る前に、偶然会った女の人がいたんです」

「あぁ、それで……」

築山さんは眉根を寄せてため息をついた。

「あの日の匠、ちょっと荒れ気味だったんだよね」

「荒れ気味?あの補佐が、ですか?」

「そう、あの匠が」

それから、忌々しいとでもいうように顔をしかめた。

「正直言うと、匠の離婚に関しては、俺も冷静に話せる自信はあまりないんだけどね」 

「すみません……」

私はうつむいた。言いたくないことを聞き出そうとしている自分の勝手さに、改めて申し訳ない気持ちになる。

「みなみちゃんが謝ることはないよ。いずれにしても、避けては通れない話だろうしね。あいつもそろそろ、あの時のことをきれいさっぱりと吹っ切った方がいい時期なのかもしれないな。匠には幸せになってもらいたいと思ってるんだ」

築山さんは少し考えるような目をして、おもむろに話し出した。
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