恋愛下手の恋模様~あなたに、君に、恋する気持ちは止められない~
「結局ファミレスになってしまって、ごめんね」
「いえ。私、ファミレスって好きです。気楽な感じで」
私は辺りを見渡した。ファミレス特有のがやがやした空気にホッとする。ぎこちない私たちには、これくらいの賑やかさがちょうどいいと思った。
料理を注文し終えて入れ違いでドリンクバーに飲み物を取りに行く。
彼が戻って来るまで席に一人でいた私は、飲み物に口をつけながら考えていた。つい勢いで話をしてみたいと言ってはみたはいいけれど、何をどんな風に話し始めればいいのかと悩んでいた。
けれど、そんな心配は不要だった。そもそも補佐は話題も知識も豊富なトップ営業だ。彼のおかげで私の緊張が解けるのは早く、気がつけば彼との会話を楽しむまでになっていた。
その流れの中で会社での話になった。補佐が思い出したように言う。
「白川さんとはうまくやっているようだね」
その名前を聞いてどきりとしたが、私はその動揺を隠して頷いた。
「はい、いつも優しく教えて下さいます。時々はご飯を一緒に食べに行ったり、本当に仲良くしていただいていて」
「彼女は面倒見がいいから、困ったことがあったら何でも相談するといいよ」
「はい」
私は笑顔で返事をしたが、胸の辺りが落ち着かなかった。遼子さんのことを話す補佐の声音に何かしら特別な響きを感じたからだ。
やっぱりあの「りょうこさん」は、遼子さんのことなのだろうか?
脳裏に昨夜のことが浮かぶ。補佐が見ていた夢の中身が気になって、張り付いたような笑顔しか作れなくなった。
「岡野さん、どうかした?」
訊ねられてはっとした。私はにこっと笑う。
「なんでもありません」
けれど補佐は私の顔をじっと見る。
「何か心配事でもある?」
「いえ、本当になんでもありませんので」
補佐の視線をかわして私は目を伏せ、グラスに挿したストローを弄んだ。
「そう?」
補佐は私の顔をしげしげと見ていたが、しばらくすると笑いを含んだ声で言った。
「岡野さんって」
ちょうどその時、近くの席にいた小さな子供たちが喧嘩を始めた。その賑やかさに、補佐が言おうとした言葉の続きがかき消されてしまった。
私の耳まで届かなかったことを残念に思い、身を乗り出すようにして補佐に訊ねた。
「今、なんておっしゃったんですか?」
「いえ。私、ファミレスって好きです。気楽な感じで」
私は辺りを見渡した。ファミレス特有のがやがやした空気にホッとする。ぎこちない私たちには、これくらいの賑やかさがちょうどいいと思った。
料理を注文し終えて入れ違いでドリンクバーに飲み物を取りに行く。
彼が戻って来るまで席に一人でいた私は、飲み物に口をつけながら考えていた。つい勢いで話をしてみたいと言ってはみたはいいけれど、何をどんな風に話し始めればいいのかと悩んでいた。
けれど、そんな心配は不要だった。そもそも補佐は話題も知識も豊富なトップ営業だ。彼のおかげで私の緊張が解けるのは早く、気がつけば彼との会話を楽しむまでになっていた。
その流れの中で会社での話になった。補佐が思い出したように言う。
「白川さんとはうまくやっているようだね」
その名前を聞いてどきりとしたが、私はその動揺を隠して頷いた。
「はい、いつも優しく教えて下さいます。時々はご飯を一緒に食べに行ったり、本当に仲良くしていただいていて」
「彼女は面倒見がいいから、困ったことがあったら何でも相談するといいよ」
「はい」
私は笑顔で返事をしたが、胸の辺りが落ち着かなかった。遼子さんのことを話す補佐の声音に何かしら特別な響きを感じたからだ。
やっぱりあの「りょうこさん」は、遼子さんのことなのだろうか?
脳裏に昨夜のことが浮かぶ。補佐が見ていた夢の中身が気になって、張り付いたような笑顔しか作れなくなった。
「岡野さん、どうかした?」
訊ねられてはっとした。私はにこっと笑う。
「なんでもありません」
けれど補佐は私の顔をじっと見る。
「何か心配事でもある?」
「いえ、本当になんでもありませんので」
補佐の視線をかわして私は目を伏せ、グラスに挿したストローを弄んだ。
「そう?」
補佐は私の顔をしげしげと見ていたが、しばらくすると笑いを含んだ声で言った。
「岡野さんって」
ちょうどその時、近くの席にいた小さな子供たちが喧嘩を始めた。その賑やかさに、補佐が言おうとした言葉の続きがかき消されてしまった。
私の耳まで届かなかったことを残念に思い、身を乗り出すようにして補佐に訊ねた。
「今、なんておっしゃったんですか?」