恋愛下手の恋模様~あなたに、君に、恋する気持ちは止められない~
「それで、白川さんとはもう話をした?」

私は大きく動揺した。その話が何についてなのかを彼は言わなかったが、倉庫での件を指していることはすぐに分かった。

狼狽する私に、補佐は穏やかな表情のままさらりと言った。

「倉庫でのこと、白川さんと話をして誤解が解けているならいいんだけど、もしまだなら俺から話してしまった方がいいだろうと思ってさ」

「あの、それは……」

遼子さんからすでに聞いている話ではあったが、補佐がそれをどう話すのか気になった。それを聞けば、壁を隔てていた時には分からなかった補佐の本当の気持ちが分かるのだろうかとも思う。続けて心配が一つ浮かんだ。

その話を聞く過程で、私は補佐に自分の想いを隠し通せるだろうか――。

「遼子さんとは、昨夜のうちに色々お話しできました」

遼子さんに言ったと同じように、補佐に対しても直接伝えておきたい。

「その時遼子さんにも言いましたが、あの時私があの場所にいたのは本当に偶然なんです。お二人の会話も本当にたまたま聞こえてしまっただけで、立ち聞きするつもりなんて全然ありませんでした。ただ、立ち去るきっかけを失ってしまって……」

私が本当のことを言っていると信じてくれるだろうか――。

「分かっているよ」

驚くほど彼はあっさりと頷いた。

「俺たちの会話のどの辺りが聞こえたのかも、見当がついてるよ。それで?白川さんと話はしたけれど、まだ何かが岡野さんの心に引っ掛かってるってこと?今日の様子からそう思えたんだけど」

私は言葉に詰まった。遼子さんの話の通りなのだろうと一応は納得した。けれど、補佐の本心はどうなのかとまだ気になっていることも確かだ。遼子さんは互いになんとも思っていないと断言していたけれど。

「ほら、まただ。何か色々と考えてるね」

補佐は苦笑しながら、手元のペットボトルに目線を落とした。

「岡野さん」

「はい」

彼は自分の手元を見たまま、私に訊ねた。

「俺が彼女にとっては恋愛対象外だったっていう話は?」

「えっ……」
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