恋愛下手の恋模様~あなたに、君に、恋する気持ちは止められない~
「補佐、お疲れ様でした。ビールでいいのかしら?」

ふんわりとした笑顔で、遼子さんが補佐に声をかけた。手には新しいグラスとビールの瓶を持っている。注文してくれていたようだ。

「ありがとうございます」

軽く頭を下げる補佐に遼子さんはグラスを手渡し、ビールを注いだ。

私は二人の様子をぼんやりと眺めていたが、ふと思う。

絵になる二人だなぁ――。

「ところで、彼女は白川さん直属の新人さんですか?」

補佐の問いかけに、遼子さんは笑って頷いた。

「えぇ。岡野さんといって、とっても頼りになるのよ」

遼子さんの誉め言葉が照れ臭い。私は居住まいを正し、改めて自己紹介した。

「岡野と申します。今は遼子さんにご迷惑ばかりかけていますが、頑張りますので、よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくね」

「あ、ありがとうございます」

私は慌ててぱっと頭を下げた。整ったその顔に浮かんだ笑顔がきれいすぎて、直視できなかった。

遼子さんの声が聞こえる。

「補佐、ビール、もう少しいかがです?」

「はい、それじゃあ頂きます」

補佐は遼子さんにグラスを差し出した。

その時何気なく補佐の横顔が目に入った。頬の辺りがほんのわずかに強張ったように思われて、気になった。

歓迎会は一次会だけでは終わらなかった。メンバーのほとんどが二次会へ流れることになった。

そんな中、遼子さんはみんなに引き留められながらも、見事なくらい軽やかな笑顔でそれをかわして帰って行ってしまった。

私はというと。

ただ席が近かったというだけで、宍戸から半ば強引に二次会へと引っ張られていった。

お酒は嫌いではないものの、今日は家に帰って早く足を延ばしたい気分だった。けれど、これも会社人としてのお勤めの一環かと諦める。楽しそうな他の同期たちを横目に見ながら、私は大人しく飲んでいた。

「そろそろお開きにするか」

誰かの声をきっかけにして、皆それぞれに帰り支度を始めた。ところが、さらに三次会へ行こうなどと言い出す強者たちが現れた。さすがにもうこれ以上は、と断る女子たちの方が圧倒的に少なかったのには驚いた。
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