恋愛下手の恋模様~あなたに、君に、恋する気持ちは止められない~
9.告白
過去といま
私はごくりと生唾を飲み込んだ。あの女性のことを話そうとしてくれているのかと、息を詰めるようにしながら、私は補佐の言葉の続きを待った。
補佐は組んだ手の上に顎を乗せると、ゆっくりと口を開いた。
「あの人は……」
言いにくそうにいったん言葉を切った後、再びゆっくりと話し出す。
「妻だった人なんだ」
つ、ま……?元カノではなく、元妻?補佐は過去に結婚していたことがあるということ?
「あ、の…」
頭がうまく働かない。私はぎこちなく、ゆっくりと瞬きをした。どんな反応をすればいいのか分からない。言葉がすぐに出てこない。
今どきバツイチなんて珍しいことではない。きっと色々な事情があっての選択だったと思うし、その別れ方にも様々な形があるだろうと理解している。
ただ、補佐たちはあまりいい別れ方ができなかったのかもしれないと思った。それはさっきの二人、特に補佐の様子からそう想像できた。
補佐は上目遣いで私をそっと見た。
「驚いたよね」
「はい……まぁそれは……」
補佐は目を伏せると、静かにけれどはっきりとした口調で続けた。
「このことは、今の会社の人間は誰も知らないはずだ。離婚したのは六年くらい前のことで、この会社に転職したのはその後だったからね。唯一知っているのは、俺を拾ってくれた社長くらいかな。だからそれ以外だと、岡野さんに話したのが初めてだ」
「そうでしたか……」
そんな反応しか返せなかった。心の準備をする暇もなく突然入ってきた情報だ。それを処理するのに頭が追いつかない。
「ごめんね。こんな話は聞きたくなかったと思うけど、岡野さんには伝えておきたかった」
補佐は苦しそうな顔をしている。本当は思い出したくなかったとでもいうように。
疑問が口を突いて出た。
「どうして私に?」
補佐は私の問いに低い声で答えた。
「あの時の岡野さんが、傷ついたような目で俺とあの人を見ていたように感じたから」
「それは……」
私は唇の端を軽く噛んだ。自分がそんな目をしていたとは、全然気づかなかった。補佐はそれを見て、私の想いに気づいてしまっただろうか。けれどもしそうなら――。
補佐は組んだ手の上に顎を乗せると、ゆっくりと口を開いた。
「あの人は……」
言いにくそうにいったん言葉を切った後、再びゆっくりと話し出す。
「妻だった人なんだ」
つ、ま……?元カノではなく、元妻?補佐は過去に結婚していたことがあるということ?
「あ、の…」
頭がうまく働かない。私はぎこちなく、ゆっくりと瞬きをした。どんな反応をすればいいのか分からない。言葉がすぐに出てこない。
今どきバツイチなんて珍しいことではない。きっと色々な事情があっての選択だったと思うし、その別れ方にも様々な形があるだろうと理解している。
ただ、補佐たちはあまりいい別れ方ができなかったのかもしれないと思った。それはさっきの二人、特に補佐の様子からそう想像できた。
補佐は上目遣いで私をそっと見た。
「驚いたよね」
「はい……まぁそれは……」
補佐は目を伏せると、静かにけれどはっきりとした口調で続けた。
「このことは、今の会社の人間は誰も知らないはずだ。離婚したのは六年くらい前のことで、この会社に転職したのはその後だったからね。唯一知っているのは、俺を拾ってくれた社長くらいかな。だからそれ以外だと、岡野さんに話したのが初めてだ」
「そうでしたか……」
そんな反応しか返せなかった。心の準備をする暇もなく突然入ってきた情報だ。それを処理するのに頭が追いつかない。
「ごめんね。こんな話は聞きたくなかったと思うけど、岡野さんには伝えておきたかった」
補佐は苦しそうな顔をしている。本当は思い出したくなかったとでもいうように。
疑問が口を突いて出た。
「どうして私に?」
補佐は私の問いに低い声で答えた。
「あの時の岡野さんが、傷ついたような目で俺とあの人を見ていたように感じたから」
「それは……」
私は唇の端を軽く噛んだ。自分がそんな目をしていたとは、全然気づかなかった。補佐はそれを見て、私の想いに気づいてしまっただろうか。けれどもしそうなら――。