恋愛下手の恋模様~あなたに、君に、恋する気持ちは止められない~
「補佐、私……」
私は弾かれたように身を乗り出すと、今日こそは伝えようと思っていた言葉を口にしようとした。
ところが補佐はそれを止めるかのように話し始めた。
「岡野さんからあの店を指定された時も、例え偶然にだって絶対に会うことはないと思っていたけれど……」
補佐は大きなため息をつくと、組んでいた手を崩して片方の手を額に当てた。
「あんな偶然。まさか、あの人と顔を合わせることになるなんて思っていなかった……」
それを聞いて、私は悟った。以前あの店に一緒に来たその相手は元妻である、あの女性だったのだ。なぜ別れたのか、補佐のあの表情と態度の理由が気になった。
思いつくのは性格の不一致、不倫、暴力くらいだ。しかし補佐が相手に暴力をふるうような人だとは思えない。もしもそれが理由だったとしたら、あの時あの人が補佐の腕に自ら手を伸ばすようなことはしないと思うのだ。
補佐は自分の手元に視線を落とした。
「あの人に会ったら思い出してしまった。どうして俺たちが離婚したのか。そのもともとの原因がなんだったのか」
私は黙って補佐の話に耳を傾ける。
「離婚を決めてからも色々あった。あんな思いをするのはもう二度とごめんだと思った。それならこの先、誰のことも好きにならなければいいんじゃないかと、単純にそう思った。それなのに白川さんを好きになった。離婚してから四年ほどが過ぎていて、色々と落ち着き出した頃だったと思う」
遼子さんを好きになったその頃のことでも懐かしんでいるのか、補佐の表情が和らいだ。
「その話の顛末は知っているよね」
補佐は微笑んで私を見た。
「結果的には振られてしまったけど、あの時分かったんだ。離婚を経験して、この先はもう誰も好きにならないなんて思ったくせに、俺はまだ誰かを好きになったりするんだ、ってね。それともう一つ。誰かを好きになるっていう気持ちは、ブレーキをかけようとしても止められないものだっていうこともね」
それはよく分かると思った。私も同じように思ったことがあったから。
私は弾かれたように身を乗り出すと、今日こそは伝えようと思っていた言葉を口にしようとした。
ところが補佐はそれを止めるかのように話し始めた。
「岡野さんからあの店を指定された時も、例え偶然にだって絶対に会うことはないと思っていたけれど……」
補佐は大きなため息をつくと、組んでいた手を崩して片方の手を額に当てた。
「あんな偶然。まさか、あの人と顔を合わせることになるなんて思っていなかった……」
それを聞いて、私は悟った。以前あの店に一緒に来たその相手は元妻である、あの女性だったのだ。なぜ別れたのか、補佐のあの表情と態度の理由が気になった。
思いつくのは性格の不一致、不倫、暴力くらいだ。しかし補佐が相手に暴力をふるうような人だとは思えない。もしもそれが理由だったとしたら、あの時あの人が補佐の腕に自ら手を伸ばすようなことはしないと思うのだ。
補佐は自分の手元に視線を落とした。
「あの人に会ったら思い出してしまった。どうして俺たちが離婚したのか。そのもともとの原因がなんだったのか」
私は黙って補佐の話に耳を傾ける。
「離婚を決めてからも色々あった。あんな思いをするのはもう二度とごめんだと思った。それならこの先、誰のことも好きにならなければいいんじゃないかと、単純にそう思った。それなのに白川さんを好きになった。離婚してから四年ほどが過ぎていて、色々と落ち着き出した頃だったと思う」
遼子さんを好きになったその頃のことでも懐かしんでいるのか、補佐の表情が和らいだ。
「その話の顛末は知っているよね」
補佐は微笑んで私を見た。
「結果的には振られてしまったけど、あの時分かったんだ。離婚を経験して、この先はもう誰も好きにならないなんて思ったくせに、俺はまだ誰かを好きになったりするんだ、ってね。それともう一つ。誰かを好きになるっていう気持ちは、ブレーキをかけようとしても止められないものだっていうこともね」
それはよく分かると思った。私も同じように思ったことがあったから。