あの頃、キミが全てだった。



諦めて、部屋に向いて歩こうとした時、



「あ、雫!」


パシッ。



私の名前を言ったと同時に手首を掴んでくる皐月に、



「び、びっくりさせないでよ」


なんて、内心嬉しくてたまらない気持ちを抑えながらも、
驚いたことを言えば、



「俺に会えなくて寂しかった?」


「寂しかった…」


思わず溢れてしまった言葉を、手で口を押さえて皐月を見ると、



「あははは、からかってごめんごめん、絡かいに付き合ってくれてありがとな、じゃ、また!」



そう言って、去っていく皐月に、



やられた………手のひらでコロコロ転がされてしまった。



それでも、私の気持ちは、本心だったのに………



「皐月のバカ…」


皐月が小さくなっていく後ろ姿を見ながら、そう呟いた。
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