あの頃、キミが全てだった。
「なんかりんごみたいに真っ赤だけど大丈夫?」
いつの間にか、ドアップでやって来た皐月は、そう呟くと、
私のおでこの方に手を伸ばした。
シュッ。
なんとか避けた私は、
「なんでもない、ただ美羽が…」
誤魔化すように美羽の名前を口にすれば、
「あー、ヤキモチね、ま、気にするな!俺がいるから」
皐月にとっては特に気にすることもなく発した発言でも、
私の心はすぐにまた皐月の言葉で、反応する、
「そう言うことをサラッと言わないでよ……」
胸の高鳴りを隠すように、そう呟けば、
「ほら、気を取り直してみんな勉強始めるぞー」
皐月のその一言で私達はまた勉強を再開しては、日が沈むまでひたすら2人にお勉強を教えたのだった。