【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。
なんで、今更こんな気持ちが湧き上がるのだろう。
もう決めたことでは無いか。
私は、旦那様を嫌いになると。
「理由は……旦那様のことが、好きでは無くなったからです。それに、この婚約は政略です。お互いの目的も果たせたことですし、私はもう用済みかと……」
「なら、私はお前のことをもう一度惚れさせれば良いのだな?」
「へ?」
理由を聞かれ、たんたんと答えていたのに何故か変な方向に話がいってしまっている。
なんでそうなるの?
旦那様は私のことが苦手で、嫌いなんじゃないんですか?
「私はお前と別れる気はない。離婚を“受け入れる”が“承諾したつもりは無い”」
……どくん。
いつもは冷たい旦那様。
こんなふうに私とまともに話したのは今日が初めてかもしれない。
本当の夫婦ならこんな些細なことは日常茶飯事なのに、私と旦那様はそんな時間は存在しなかった。