【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。
そんな考えをよそにお父様はとんでもないことを言い出した。
『こっちの借金を返済したら正体がバレる前に戻ってこい。扇谷家の名に恥じぬよう結婚生活を送ることだな。20になる年にこっちに戻ってこい』
『え……?』
実は経営が上手くいかず、借金を抱えていた扇谷家は、ここぞとばかりにこの婚約に食いついた。
不安な私の心配もしないで、お父様は話している。
『それが出来たら上等だ。お前のことを褒めてやろう』
いつも叱られていたお父様にその言葉を言われ、ハッと顔を上げる。
お父様に、褒めてもらえる?
散々いらないもの扱いしてきた私を……?
両親から愛された記憶がない私は、そのことにドキドキと心臓を騒がせた。
上手く利用されているのはわかってる。
だけど……私だってお父様から認められたい。褒められたい。
そんな気持ちに魔が差して、私は……その契約をお父様と交わした。