好きになって、俺のこと
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最寄り駅から徒歩約15分程度。そこに私の働くサカノエ商事のビルがドンと構えている。周りにもたくさんのオフィスビルが立ち並んでいるせいで、朝は多くの人とすれ違う。雨の日なんかは傘地獄である。
そこそこ大きな会社に勤められればと言う容易な理由からこの会社を選び、働き始めて今日まではや5年。私はなりたくない社畜にしっかりと成った。
仕事は押し付け合い、上司の顔色伺い。そんな日々。学生の頃に想像していた毎日とはかけ離れている。でも、現実はそんなものだよね。
____そして今日も。カタカタとキーボードを鳴らしている私の元へ大嫌いな上司が近づいてきた。
〝あーまた急な仕事を振られる〟
そんな嫌な予感はいつも的中するのだ。
「おい!山下」
「は、はい」
「この資料、作っといて。前回のめっちゃ分かりづらかったから今回はいい加減頼むぞ。あ、あとこれ明日の資料だから。確実に今日中に仕上げとけ」
「…わかりました」なんて私の返事を待たずして、課長は事務所を出ていった。