好きになって、俺のこと
恐る恐る顔をあげれば、2人組の男たちが視界に写った。どうやら、その2人のうちの1人とぶつかってしまったらしい。
「おいおい〜ちゃんと前見て歩かねぇと。なぁ?」
ニヤニヤと口角をあげて品定めするように私を下から上へと舐めるように見る男たちについ体が強ばる。
____早く謝ってこの場からすぐ逃げなくちゃ。
そう思い、口を開いた瞬間、強引に掴まれる右腕。
「…っ!」
「格好見るにお仕事終わりっすか?大変ですね〜疲れてるでしょ?俺たち、お姉さん癒せる自信ありますよ」
「け、結構です…っ」
「でもぶつかってきたのお姉さんでしょ?痛かったんだけど」
「そ、それは…すみま、せん」
こういう場面、ドラマで見る度になんで主人公は助けてって叫ばないんだろうって思ってた。だけど当事者になった今わかった。怖くて声なんか出せない。ただ震えるだけで何も出来ないんだ。
強引に引っ張られる力に必死に抗うもその力に勝てるはずもなく。不安と恐怖で視界がボロボロに崩れ始めた時だった。