アブナイ三角関係


「保身って…どうして?」

私もいつもみたいな騒がしい音ではなく、秋斗くんの空気に合わせたなるべく静かな声で聞く。



「さあね。自分でもよくわからないけど…常に『無難』な人間であれるように自分を囲ってるんだと思うよ。そういうとこあるでしょ?人って」

…まあ確かに。


でも秋斗くんに至っては無難のレベルが高すぎる気もするけどね。
普通そんなに紳士的じゃないよ、人間。



「恨まれるのも厄介ごとに巻き込まれるのもごめんだからさ、一番『問題のない』人柄に自分を当てはめることで安全に生きてるだけだよ」


グイーッと手を上げて伸びをする。
呆れたように軽く息を吐きながら。


「だからああやってクラスの子に期待されると、それに応えなきゃって勝手に自分追い込んで気疲れするんだよね。めんどくさい性格でしょ?」

あまり自分のことを話さない秋斗くんが珍しくそんなことを言う。


文化祭独特の非日常の空気がそうさせるのか
学校の敷地外という一時的な解放感がそうさせるのか…



珍しく私が黙ってしまったせいか秋斗くんはハッとしてこちらを見る。


「なんてね。ごめん変なこと言って。さっきまで息が詰まってたからつい口元が緩くなってた」

焦ったようにそう言った。


「何買うんだっけ?ホットケーキミックスとかだよね」


……。

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