アブナイ三角関係


「なぁ美桜」



「なんで萩原が好きなの?」


え?

冬紀くんが珍しく真面目な顔をして聞いた。


「前にさ、美桜は恋に理屈はいらないって、本能のようなものだって言ってたけど…少なくとも萩原を選ぶ理由は何かしらあるだろ?」

…うん。
まあ、それは色々あると思う。



もちろんかっこいいから。

見た目だけじゃなくて
当然のように誰かを助けられるところも、やると決めたことをちゃんとやりきる姿勢も…

誰かの期待に応えようと、自分をも追い込んでしまうところも…

全部ひっくるめて、秋斗くんはかっこいい人だ。


そして優しい人だ。

時折見せる秋の風みたいな笑い方も、見た目よりも骨ばった手も
全部あったかくて優しい。


もちろんこれらは恋をする立派な理由にはなる。

でも…
何かが…違う気もしている。



きっと、私をこうも悩ませる原因になっているのは


さっきも見た、たまに現れる

“いつもと違う秋斗くん”だ。



私は、私の好きな人のことを
全く知らないのではないかと。

彼のことをよく知りもしないで、恋だなんだと豪語するのは滑稽な話だ。


誰かを好きになるのは簡単な話ではない。

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