アブナイ三角関係



冬紀くんの手が私の手を包んでいる。


大きな手だ。
温かい手だ。

優しい手だ。



「美桜…手冷たいね」


低く響く心地のいい綺麗な声。

冬紀くんが私の手をより握ってそう言った。


「冬紀くんがあったかいんだよ」


私も彼の手をより握ってそう返す。

冬紀くんの目を見れば、彼も私を見ていて、どくんと心臓が波打つ。


「じゃあ熱分けてあげるよ」

「…うん」


握っていれば熱が移るのかどうかは知らないが
握られているこの手を離さなくていい口実ができた。



「まだ怖い?」

冬紀くんが心配そうにそう言って、空いている方の手で私の頬に触れる。

無意識にまだ溢れていた涙を拭ってくれたようだった。


しかしその手は私の頬から離れることはなく、そのまま触れ続けている。


「…もう怖くない。冬紀くんが来てくれたから」

だから平気。

「そっか…よかった」





「私…冬紀くんの言う通り、全然強くないね」


自分がこれだけのことに腰を抜かすとは思わなかった。

こんなに自分が弱いとは…哀れながら思っていなかった。


「迷惑かけて…ごめんね」

< 233 / 271 >

この作品をシェア

pagetop