ふたりだけの世界で、本物の愛を。
「千秋、やっと見つけた!」
よく通る声が、わたしの名前を呼んだ。
顔を上げると、ポニーテールをリボンで結んだきれいな髪。その下は、わたしと全く同じ制服。
「奈々……!」
「もう、ずっと心配してたよ! 先生も今朝、ホームルーム前にはいたはずの千秋が全然戻ってこない上に連絡もないって言ってたし……! しかも千秋、わたし、あれだけメッセージ送ったのに、返信もしないんだもの! 一体何があったの!?」
奈々の目は涙目で、頬も真っ赤だ。
「ごめんなさい……」
奈々、あれからメッセージを送ってくれていたんだ。
けれど、わたしはずっとスマホの電源を切って、ずっと奈々のメッセージを返そうとしなかったんだ。
わたしは、今朝から今まであったことを全て、奈々に打ち明けた。
「なるほどー。それは嫌だったね……。わたしも今日、学校すぐ来れなくてごめんね」
奈々は、わたしの両手を自分の手で包み込んで言った。
「ううん……!」
奈々は何も悪くない。
何も言わないで逃げ回ったわたしが悪いんだ。
「でも、千秋、ちょっと考えてごらんよ?」
さっきよりもずっと落ち着いた声で、話し始める奈々。
「千秋にとって、そういう周りの人と、彼氏どっちが大事なの?」
「えっ……?」
「彼氏と、彼氏について決めつけて悪く言う人。どっちが千秋にとって、大切な存在?」