ふたりだけの世界で、本物の愛を。
学校を出て、わたし、春原 千秋が向かった場所は、駅のそばだった。
「千秋ー」
「翔ちゃん!」
翔ちゃんこと稲本 翔平さん。
わたしより5歳年上の大学4年生であり、わたしの幼なじみ。
お母さん曰く、わたしが1歳の頃からの付き合いらしくて、それくらいの時にも翔ちゃんはわたしをおんぶして、遊ぶ場所へ連れて行ってくれたらしい。
だから、物心ついた頃からわたしはずっと翔ちゃん一家とは、本当の家族のように仲が良かった。
だから、私も翔ちゃんのことを本当に小さな頃からお兄ちゃんのように慕っていたのだけれど、いつからか別の感情を抱くようになっていたのだ。
翔ちゃんと目が合って、会話をして、隣を歩いて……。
翔ちゃんと過ごす時を考えれば考えるほど、顔が熱くなって、胸がドキドキといつもと違う鼓動をわたしに聞かせていたのだ。
就活が終わったことで、わたしの方から告白して翔ちゃんと付き合うことになった。
しかし、付き合ってから、わたしと翔ちゃんの関係はほとんど誰にも言っていないんだ。