ふたりだけの世界で、本物の愛を。
「千秋、着いたよ」
そっとわたしに声をかけてくれる翔ちゃんは、優しくてとろけてしまいそうだ。
わたしが顔を上げたと同時に、冷たい風が空を走り、マフラーで、わたしの肩まで伸びた髪の毛が、ふわっとなびく。
わたしの顔にまとわりついた、数本の髪の毛を翔ちゃんが払ってくれた。
「さ、入ろうか」
「うん!」
わたし達が到着したのは、普通のカフェ。
別に行くことも初めてじゃないけれど、アルバイトもしていて忙しい翔ちゃんとの時間は限られている。
だから、アルバイトがない日はできるだけ翔ちゃんと一緒にいたい気持ちが強い。
「いらっしゃいませ、2名様でよろしいでしょうか」
「はい」
店員さんの問いかけに、律儀な返事をする翔ちゃん。
わたし達は、店員さんに案内された2人用の席に腰掛けた。