繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
奈江は横断歩道を渡り終えると、右へ行こうとする彼に、左を指差しながら声をかける。
「寄りたいところがあるから、ここで」
「どこ行くんですか?」
「本屋に」
「欲しい本でもあるんですか?」
詮索好きな彼の目に好奇心が浮かぶ。ついてくる気じゃないだろうかと、思わず警戒してしまう。
「ちょっと調べもの」
「じゃあ、時間かかりそうですね。俺も行くところがあって。気をつけて帰ってください」
今日はあっさりと引き下がるようだ。奈江はあんどすると、彼に背を向けて歩き出す。
駅へ向かう人の波をさけながら、デパートにある本屋へとたどり着く。客の姿はまばらだが、専門書のコーナーへ行くと、ますます人がいない。
メモを見ながら、目当ての書籍を探していると、意外とすぐに見つかった。一冊、二冊と腕に抱え、ほかにも興味をひく書籍がないかと、背表紙をじっくり眺めていると、隣に誰かがやってくる。
専門書のコーナーには誰もいなかったはずだ。距離感が近いような気がして、すぐさま離れようとすると、「早坂さん」と声をかけられた。
「え……、あ、猪川さん?」
「やっぱり、早坂さんだった。エスカレーターですれ違ってさ、もしかしてって思って戻ってきたんだよ」
「寄りたいところがあるから、ここで」
「どこ行くんですか?」
「本屋に」
「欲しい本でもあるんですか?」
詮索好きな彼の目に好奇心が浮かぶ。ついてくる気じゃないだろうかと、思わず警戒してしまう。
「ちょっと調べもの」
「じゃあ、時間かかりそうですね。俺も行くところがあって。気をつけて帰ってください」
今日はあっさりと引き下がるようだ。奈江はあんどすると、彼に背を向けて歩き出す。
駅へ向かう人の波をさけながら、デパートにある本屋へとたどり着く。客の姿はまばらだが、専門書のコーナーへ行くと、ますます人がいない。
メモを見ながら、目当ての書籍を探していると、意外とすぐに見つかった。一冊、二冊と腕に抱え、ほかにも興味をひく書籍がないかと、背表紙をじっくり眺めていると、隣に誰かがやってくる。
専門書のコーナーには誰もいなかったはずだ。距離感が近いような気がして、すぐさま離れようとすると、「早坂さん」と声をかけられた。
「え……、あ、猪川さん?」
「やっぱり、早坂さんだった。エスカレーターですれ違ってさ、もしかしてって思って戻ってきたんだよ」