繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「2日前に倒しちゃって、壊れたみたいなのよ。夜はあれがないと、やっぱり落ち着かなくてね」

 だから、申し訳ないとは思っても、奈江に助けを求めたのだ。奈江は頼られるのが嫌いではない。むしろ、不必要に相手を助けてしまって、利用されるぐらいのお人好しだ。

「修理に出せばいい?」
「お願いできる?」
「もちろん」

 康代に頼られるのは素直にうれしい。それに、奈江だってあのランプを直したいと思う。それは、その美しさを知っているからだ。

「優しい光だったよね」

 そう、あれは確か、黄昏色の。いつだったか、明かりを灯すランプを見せてもらった記憶がある。洒落た康代にふさわしい品のある姿に、奈江もいつかこんなランプに出会いたいと憧れたものだった。

「また、つくといいけど」

 かなり重症なのだろうか。康代は少しばかり不安そうに言う。

「どこに持っていけばいい?」
「買ったところなら見てもらえると思うんだけどね。もうずいぶん行ってないから」
吉沢(よしざわ)らんぷさんだよね?」

 奈江はすぐに思い当たって、そう言う。

「そうそう。場所、わかる?」
「わかるよ。持っていってあげる」
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