鳴り響く秋の音と終わらない春の恋
春陽くんたちは――。
春陽くんたちとはるくんはもしかして――。
……信じられないという気持ちが、次第に確信に変わっていく。
「関わるなって、そんなの……無理よ」
女性は――はるくんのお母さんは頭を振り、拳を握りしめ、何かに抵抗するように訴えた。
「あの子の半身は……今も生きている。生きているもの……」
そう言いつつも、はるくんのお母さんは表情から見て取れるほどに怖がっている。
それは、まるで言葉にできない不安を抱えているようだった。
「ねえ、春陽は元気?」
「ああ。騒がしいくらい、元気だ」
少し間を置いた後、はるくんのお母さんが口にした疑問に、男性は――秋斗くんたちのお父さんは淡々と返す。
「そう、よかった……。春陽が元気なら、秋斗も元気なのね」
すぐに返されたはるくんのお母さんの言葉に、私は胸の底が熱くなる心地がした。
はるくんのお母さんの声音は優しく、心の底からほっとしたように感じられたからだ。
「お願い、春陽たちに会わせて! 会いたいの!」
「言ったはずだ。もう、私たちに関わるな、と」
秋斗くんたちのお父さんの返答に、はるくんのお母さんは表情に影を落とす。
「もういいだろう。これ以上、おまえと話すことはない」
秋斗くんたちのお父さんはそう言い切ると、はるくんのお母さんから顔を背け、そのままホールへ向かおうとする。
はるくんのお母さんが慌てたように声を上げた。
「ま、待って! お願い、話を聞いて……っ」
何かに気を取られて足を止めたはるくんのお母さんの視線の先。そこには秋斗くんがいた。
「あ……秋斗!」
秋斗くんはどう応えたらいいのか分からないといった表情でぼんやりと眺めていた。
困惑した表情の端々から、秋斗くんにとっては、はるくんのお母さんは知らない人――初対面なんだと分かる。
でも、はるくんのお母さんはそうではなかったのだろう。
「秋斗、秋斗、会いたかった!!」
「……っ」
秋斗くんたちのお父さんが制止する間もなく、はるくんのお母さんの両腕が伸ばされ、秋斗くんは抱きしめられていた。
「あの……」
思ってもみない言葉に、秋斗くんは呆然とする。
はるくんのお母さんはそんな秋斗くんを見て、小さく微笑む。