鳴り響く秋の音と終わらない春の恋
第九章 その不屈の果てに、望む人が居るのなら
夏祭りが近づいてきた祝日。
私はねねちゃんに誘われて、海沿いに広がる大きな公園――海浜公園に赴いていた。
今日は春陽くんの日だ。
春陽くんは病院の検査の後で、合流することになっている。
バスと列車を乗り継いだ先にたどり着いた公園は、まるでテーマパークのような雰囲気だった。
入口では噴水がしぶきを上げ、離れた場所には大きな観覧車まで見えた。
「しずちゃん、お待たせ!」
私が噴水の脇で待っていると、ねねちゃんが私の前まで駆けてきて微笑んだ。
「ねえねえ、今日は観覧車が半額なんだったって。ねねっ、行こう! はるくんが来たら、観覧車に行こう!」
ねねちゃんはそう言って、私の手を掴んで引っ張っていこうとする。
「あのね、ねねちゃん」
私は引かれるままに、ふと気になったことを訊いた。
「どうして、この公園なの? この臨海公園は県外で、随分離れた場所にあるよね。観覧車なら、もっと近くにもあるのに」
「それは……」
ねねちゃんはどこか焦ったように口ごもった。
その様子で、私は直感する。
「何か大切な話があるの? もしかして以前、この公園に来たことがあるとか?」
「そそっ、そういうわけじゃないんだけどね……」
ねねちゃんは慌てて否定していたけど、それは裏返しの肯定に聞こえた。
ねねちゃんは前に、この公園に来たことがあるんだ。
それに、ねねちゃんの大切な話って何だろう?
私は春陽くんにメールで待ち合わせ場所の変更を伝える。
そして、目的地である観覧車を目指して、公園を散歩した。
初夏の風は潮の匂いがして、あちこちで咲く夏の花を優しく揺らしていた。
近くには様々なキッチンカーが出店しており、美味しそうなワッフル屋さんもある。
「あっ、ワッフル! しずちゃん、まずはワッフルを食べよう! わたしはチョコレートのワッフルにするー」
「うん。私はストロベリーのワッフルにしようかな」
ねねちゃんに釣られて、私はワッフル屋さんに足を向ける。
店員さんが慣れた手つきでワッフルを作っていくのを眺めながら、ねねちゃんは嬉しそうに口を開いた。
「しずちゃん、ベンチで座って食べよう」
「うん。美味しそうだね」
店員さんが笑みを浮かべながら、ワッフルが入った箱を私たちに差し出した。
空いているベンチに座ると、ねねちゃんは小さな箱に入ったワッフルを美味しそうに食べる。