望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
プロローグ
「美紅(みく)どうしたの? ちゃんとご挨拶しないと駄目でしょう」
目の前の美しい少年に見惚れていた美紅は、母の言葉で我に返った。
「こんにちは。うすいみくです。」
慌ててお辞儀をすると、挨拶を受けた少年が優しそうに目を細めてくすりと笑う。
「美紅ちゃん、丁寧にありがとう。僕は京極史輝(きょうごくしき)というんだ。よろしくね」
「はい、よろしくおねがいします!」
美紅はなんだか嬉しくなって、はりきって答える。
そのやり取りを微笑ましく見守っているのは、ふたりの母親だ。
「早速仲良くなったみたいでよかったわ。史輝、美紅ちゃんをお願いね」
母親の言葉に、史輝が頷く。
「はい母さん。それじゃあ美紅ちゃん行こうか」
「うん!」
史輝が差し出した手を、美紅が掴んだ。
「美紅、史輝君の言うことをちゃんと聞くのよ!」
史輝と手を繋いで、林のような広い庭の奥に向かう途中、母の声が追いかけてきた。
「はーい」
振り返り、元気に手を振ってみせる。
いつもは母と離れるとすぐに心細くなってしまう美紅だが、今は史輝がいるから怖くない。