望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
ただ初夜のときの不安と恐れとは違い、ときめきによる緊張感だ。

船の上でキスをしたときの唇の感覚が、まだ鮮明に残っている。抱きしめられたときの腕の強さと逞しい体の感触も。

更に濃厚な触れ合いが待っているのだと思うと、どうかしそうだ。


カチャリとドアが開き、史輝が入って来た。

ソファの周りで落ち着きなくウロウロしていた美紅は、びくりと肩を震わす。

「美紅?」

その様子を見た史輝が首を傾げた。

しっとりした黒髪と、ガウンから見える男らしい胸元が色っぽい。美紅は思わず息を呑む。

「史輝くん……あの」

「どうしたんだ?」

史輝は躊躇いなく美紅に近付き、心配そうに顔を覗き込む。その表情すらクラクラするほどかっこよくて顔が熱くなる。

きっと赤くなったのだろう。史輝が少し驚いた顔をして、それから嬉しそうに目を細める。

「緊張してるのか?」

「は、はい……」

「それなら美紅がリラックス出来るようにしないとな。少し待ってて」

史輝がくるりと踵を返して部屋を出て行こうとする。

「どこに行くの?」

まさかまた気分が萎えてしまったのだろうか。慌てて声をかけると、史輝は美紅を安心させるように微笑んだ。
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