望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
「すぐに戻って来るから」

「う、うん」

史輝は宣言通り五分もしない内に戻ってきた。手にはワインのボトルとグラスがふたつ。

「少しだけ飲もう。体が温まるしリラックスできる」

史輝は慣れた手つきでワインを注いだグラスを、美紅に渡す。

「……いただきます」

すぐに寝室には行かず並んで座る。

「今日はいい思い出になったな」

史輝がしみじみした様子で言う。

「うん。本当に楽しかったです。史輝くんがよかったらまた行きたいな」

「花火の日に行こうか。きっと綺麗だ」

「本当に?わあ……楽しみだな、あ、でも史輝くんはまた同じところで大丈夫ですか?」

「俺は美紅が喜んでいる姿を見るのを楽しみにしてるから。いっそのこと美紅のために花火を上げるのもいいな」

「ええっ? いくら史輝でもそれは無理でしょう?」

「無理なものか。愛する妻のためなら何でもできる」

「そ、そんななら甘やかされたら、困ってしまいますよ!」

恥ずかしがる美紅に史輝がにこりと笑いかけ、グラスをテーブルに置いた。

美紅も彼に倣う。

「少しは緊張が解けた?」

史輝が美紅の頬を優しく撫でながら、顔を覗き込む。

「……はい」
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