望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
人前にそんなものを披露する自信はない。きっと貧粗に見えるだけだ。

「駄目ですよ、直感を大事に」

けれど明日香に却下されてしまった。

気が進まないながらも着替えをして、ヘアアレンジとメイクをした。

姿見に写る姿は、心配とは裏腹になかなか様になっていた。

「明日香さんの見立てはいつも完璧だよね」

「ふふ……ありがとうございます。さ、そろそろ時間ですよ」

機嫌よく弾んでいた明日香の声が、トーンダウンする。

「無理しないでくださいね。また嫌なことを言われたら、中座していいと思います」

「うん、どうしても駄目になったら戻ってくるね。行ってきます」

明日香に見送られて部屋を出る。

向かうのは、結婚披露の日に女性だけの交流会をした部屋だ。

京極本家と十ある分家は、ほとんどが遠縁関係だが、月に一度はこうして集まり情報交換をすることになっている。

主催は本家の役割だから、美紅が仕切らなくてはならない。

けれどまた披露の日のように無視をされるのではないか不安になる。明日香が無理をするなと言っていたのは、美紅の気持を察してくれているからだ。

(でも今回はできるだけ頑張ろう)
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