望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
前田夫人が優しく声をかけてくれた。彼女は分家の夫人の中でも年長者ということもあり一目置かれた存在だ。

伯母以外は彼女を尊敬しているように見える。

「はい。なんとか馴染んできています。

「お仕事の引継ぎは順調ですか?」

「家政の方はほとんど終えました」

美紅がやるべき仕事である家政とは、京極本家にかかる経費の管理だ。

交際費や必要な購入品、従業員への給与が適性に行われているか確認して、支払いの許可を出す。他には京極家として持っている財産の管理。

これも川田を始めとした古参の使用人が、代理で行ってくれていたようで、引き継ぎ後も慣れない美紅を補佐してくれている。

美紅が期待されている役割はそれだけでなく、社交もあるから本家の夫人は大変だ。

でも分家だとしても、規模の違いはあるにしても同じようなものなのだろう。

史輝の母はこれに加えて、いくつか事業を行っていたそうだ。

それらを全てこなしていたなんて、美紅から見ると信じられないくらいの有能さだ。

「そうなんですね。慣れない内は負担も大きいでしょうが、あまり無理はなさらないで」

「ありがとうございます」
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